「手」でクルマと会話する

著者:パフォーマ

「手」でクルマと会話する

人間にとって「手」とは、コミュニケーションを得るための重要な器官のうちの一つではないでしょうか?

大切な人と手を繋いだり、愛情を表現するために撫でたり、あるいは怒りを込めて攻撃したり——。

また「手」は非常に繊細かつ敏感で、直接目に見えないものを手探りで感じ取ったりすることもできます。

クルマを運転していて、手に触れる機会の一番多い箇所が、ステアリング・ホイールです。

クルマは路面の上で車輪を転がして走行しますが、路面とタイヤが接地している状態を直接目視できるわけではありません。

路面→車輪→機関→ステアリング・ホイールを通して、ドライバーの「手」と絶えずコミュニケーションを取り続けています。

例えば舗装の荒れた路面を走行していると、ロードノイズの大きさとともにステアリングを通してもザラザラした感じが伝わってきます。

またタイヤの空気圧が減っている状態から適正値に戻すと、ステアリングの操作が軽く感じられます。

このように路面やクルマ、タイヤの調子によってクルマの挙動に異変を感じると、即座にステアリングの動きに現れるため、安全面において重要なシグナルとなります。

また、クルマの特性やキャラクターもステアリングから感じ取ることができます。

乗り心地に重点を置いた高級車は、ステアリングの動きに対して鷹揚に反応するのに対し、走りに特化したスポーツカーは少し切っただけでも即座に反応します。

同じ車種をベーシックグレードとスポーツグレードで乗り比べてみても、面白いかもしれません。

余談ですが、自動車雑誌の試乗レポートを読むと、ステアリングの感触についていろいろな表現を見ることができます。

とある自動車評論家による印象的な表現が、“錐(キリ)で木材に穴を開ける時のようなゴリゴリ感”。

あまり良くない物の例えではありましたが、なるほどと感心しました。

ところでステアリング・ホイール自体の素材も、多岐にわたっています。

戦前のクルマは鉄枠に被覆をしたくらいのものでしたが、ウッドからセルロイド、ウレタンフォーム、本革巻きへと発展してきました。

「手」でクルマと会話する1

製造技術の進化の歴史と重なるのですが、ウッドや本革巻きなどは、素手に対する温もりという点で与える印象が違います。

さらに近年では、ステアリングヒーターを装備しているクルマも増えてきています。

これも「手」の肌感覚とクルマとのコミュニケーションと言えるかもしれませんね。

昨今話題となっている「自動運転」。

乗っている人間の手がステアリング・ホイールから完全に離れたとき、

クルマとの貴重なコミュニケーションの手段が失われるような気がして、少々寂しく感じます…。

(WS)

著者について

パフォーマ administrator

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